フランスの社会学者ロジェ・カイヨワは、著書『遊びと人間』の中で、遊びの主要な性格に基づき、あらゆる遊びを以下の4つの基本範疇に分類しました。
この分類は、人が遊ぶときの根本的な態度や動機に着目したものです。
これを思い返した時、私はeモータースポーツはこの4つの要素全てを満たす「究極の遊び」と言えるのでは?と思い今回はその分類についてとeモータースポーツにあてて書いてみます。
カイヨワによる遊びの4分類とは?
参考文献
| 分類名 | ギリシャ語名 | 性格 | 具体例 |
|---|---|---|---|
| 競争 | アゴン (Agon) | 勝利という価値を得るため、公平な条件で能力を競い合う遊びです。努力や練習が結果に反映されます。 | スポーツ(サッカー、ボクシング)、チェス、オセロなど |
| 偶然 | アレア (Alea) | 運命に身を委ね、勝敗が自分の力では決まらない、偶然性に依存する遊びです。運命に打ち勝つことを目指します。 | 賭け事(ルーレット、バカラ)、すごろく、富くじなど |
| 模擬 | ミミクリ (Mimicry) | 架空の人物や状況を演じ、自己を他者とすることで日常の世界から一時的に脱出する遊びです。 | ごっこ遊び、演劇、仮面舞踏会、コスプレなど |
| 眩暈 | イリンクス (Ilinx) | めまいや混乱の状態を伴い、自分の知覚を一時的に破壊することで、自己を忘れて熱狂する遊びです。 | ジェットコースター、ブランコ、空中サーカス、ダンス、お酒など |
その他の視点
今回の記事では言及しませんが、カイヨワはさらに、遊びの行動様態として、パイディア (Paidia) と ルーダス (Ludus) という2つの対極的な概念を提示し、4分類と組み合わせて考察しました。
- パイディア (Paidia):無秩序で気ままな発散、即興性、自由な熱狂に基づく遊び。子どもらしい無邪気な側面。
- ルーダス (Ludus):規則や制約を設け、努力や技術を要する、洗練された遊び。文化や社会性を反映した側面。
多くの遊びは、このパイディアからルーダスへの発展の軸と、先に挙げた4つの分類の要素を複合的に持っていると考えられています。
- ちなみにこのルーダスは小島秀夫監督率いるコジマプロダクションのマスコット、ルーデンス君の楚となるホモ・ルーデンスの語源にもなります。
遊びの4分類とeモータースポーツの対応
アゴン(競争)
ここについては説明不要ですが、レースそのものが人類の原初的な競争=競走の競技であり、誰よりも速く走ることを目指すeモータースポーツの本質です。
- 多数の車両、プレーヤーが同時に走り全車の中で最も先にゴールを目指す「レース」
- 規定コースを単独で走り、1発の速さを競う「タイムアタック」
- 速さではなく、その美しさ、技量を競う「ドリフト」
その競争に対しても多様な様式を持つのがeモータースポーツだと言えるでしょう。
アレア(偶然)
前項で挙げた「レース」は特に他者と同時に競うからこそ起こりうる、自分だけではおこりえない偶然性を有しています。
レース内では誰もが理想のラインを誰よりも速く走ろうと考え、またその理想のラインも使用する車両によって、あるいは燃費やタイヤの消耗によって変化する。だから常に他者との位置関係を、安全に走行することが重要になってくるが、それでも接触やスリップなどのアクシデントが発生しうる。
あるいは現代のeモータースポーツタイトルでは多くの場合、雨や風などの天候設定が可能であり、レース中に突然の雨が…という場面も珍しくない。
そういったアクシデントによって、勝つことが難しいレースでも勝てたり、またその逆が起こりうる偶然性もeモータースポーツは有しています。
ミミクリ(模倣)
eモータースポーツの最大の魅力のひとつ。
リアルな挙動、実在のサーキットトラック、F1やスーパーGTなどのプロドライバーと同様の環境で腕を競うことができる。
またハンドルコントローラが発生するFFB(フォースフィードバック)は近年のデバイスの進化により実車と同じような感覚でゲーム内の車両の操作が可能になった。
さらには本物のレースを模倣したようなルール設定(ルマン24時間レースや鈴鹿8時間耐久レースなど)が可能であり、それらには現実同様複数人でチームを組んで出場することが出来るのだ。
さらに「本物のレースを模倣しつつ、本物では実現不可能なシナリオ」(F1とGTカーの混走、2周交代10人チーム対決などなど、ルールは思いつく限り設定可能)まで可能な点はeモータースポーツだからこそ出来る面白さでしょう。
イリンクス(眩暈)
よくアスリートや受験勉強に勤しむ学生が「ゾーンに入った」と言うような極度の集中、またVRシミュレーターやモーションリグで体験する“没入感”は、まさにイリンクスの領域です。
高速でのコーナリングやスリップ、スピンはFFBにより現実に近い身体感覚を呼び起こす。
まとめ
このようにeモータースポーツには、競争(アゴン)、偶然(アレア)、模倣(ミミクリ)、眩暈(イリンクス)といった「遊びの四分類」のすべてが内在しています。
つまり、eモータースポーツはこの四分類を網羅している稀有なジャンルなのです。
遊び論的な観点から見ても、eモータースポーツはまさに「究極の遊び」であり、文化として大きな価値を持っているといえます。
この「究極の遊び」eモータースポーツの世界へあなたも参加してみませんか?

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